VaR vs CVaR — 本当に最悪 5% で何円損するか
本記事は当サイト4 段階教育構造を採用:コンセプト / 当サイトの計算方法 / 数字の見方 / 注意事項。
1. コンセプト
「この銘柄の 10 年リターンは 8%」と聞こえは良いが、投資家が本当に気にするのは**「最悪の日にどれだけ損するか」。これが裾リスク(Tail Risk)**。
裾リスクの定量化には 2 つの相補的指標:
| 指標 | 日本語 | 答える質問 |
|---|---|---|
| VaR | バリュー・アット・リスク | 95% 信頼下、単日最大損失は? |
| CVaR | 期待ショートフォール | 本当に最悪 5% の日に踏み入った場合、平均で何円損するか? |
なぜ CVaR が VaR より重要
VaR は「しきい値」のみ示し、「しきい値外がどれほど悲惨か」を示さない。2 銘柄を想像:
- 銘柄 A:VaR 95% = −3%、しきい値超日の平均損失 −3.5%
- 銘柄 B:VaR 95% = −3%、しきい値超日の平均損失 −10%
両者の VaR は同じだが、B の「裾のブラックスワン」は明らかに恐ろしい。CVaR はこの 2 銘柄を区別可能、VaR はできない。
これがバーゼル III やアカデミアが徐々に **CVaR(Expected Shortfall, ES とも)**を選好する理由。
2. 当サイトの計算方法
データソース
- 個別銘柄:過去 252 取引日のシンプル日次リターン
- ポートフォリオ:ポートフォリオ日次純資産から導出した日次リターン系列
方法:ヒストリカルシミュレーション法
VaR 95% = 過去 252 日リターンの 5 パーセンタイル CVaR 95% = 過去 252 日リターンの 最悪 5%(〜12〜13 日)の平均
なぜ正規パラメトリック法でなくヒストリカルシミュレーション
最も一般的な代替案:リターンが正規分布に従うと仮定し、平均 ± 1.645σ で VaR を逆算。しかし株式リターンは正規分布ではない、実分布:
- 左に歪み(下落 skewness)
- 厚い裾(極端事件の頻度が正規予想より高い)
正規法は裾リスクを過小評価。ヒストリカルシミュレーション法は実データを直接使用、裾の太さがそのまま反映。
サンプル不足処理
サンプル < 60 日時、available: false を返し不安定な推定を回避。
3. 数字の見方
UI 表示(個別銘柄リスクページ / ポートフォリオ VIP 領域)
VaR 95% -2.19% CVaR 95% -2.73%
判読:
- 「95% 信頼で、銘柄の単日損失は 2.19% を超えない」
- 「本当に最悪 5% の日に踏み入った場合、平均 2.73% 損失」
水準参考表(個別銘柄日次 VaR 95%)
| VaR 95% 水準 | ボラ特性 |
|---|---|
| > −1.5% | 極低ボラ(債券型、公益) |
| −1.5%〜−2.5% | 一般値嵩株、大型株 |
| −2.5%〜−4% | 成長株、中型株 |
| −4%〜−6% | 小型株、高ボラ投機株 |
| < −6% | 極端投機(バイオベンチャー、小型仮想通貨、高レバレッジ ETF) |
個別銘柄 vs ポートフォリオ VaR
ポートフォリオ VaR が各個別銘柄 VaR より低い → 分散投資が成功(負相関ヘッジ)。 ポートフォリオ VaR が最高ボラ構成銘柄に近い → 分散失敗(P0.2 相関性で検証可能)。
VaR / CVaR の相対関係
一般に CVaR < VaR < 0。
- 比 CVaR / VaR が 1 に近い → 裾が薄い(良)
- 比 CVaR / VaR ≫ 1(1.5 倍など)→ 裾が厚い(悪:極端事件はしきい値より大幅悪化)
4. 注意事項
⚠️ 過去 ≠ 未来
ヒストリカルシミュレーション法は**「過去分布が継続する」**を仮定。
- 過去 252 日に 2008 級の崩壊がない → VaR が真のリスクを過小評価
- 市場構造急変(利上げサイクル切替、ブラックスワン)時、ヒストリカル VaR は深刻に歪む
補完方法:
- ストレステストと組み合わせ(Phase 2.3 計画中)
- GARCH ボラティリティと組み合わせ(Phase 4.4 計画中)
- 「歴史的極端事件マーキング」に注意(P1C.5 近日公開)
⚠️ 252 日では全市場状態をカバーできない
252 日 ≈ 1 取引年。1 年で重大事件が起きない可能性 → VaR が楽観的すぎ。 逆に 252 日が崩壊年内なら → VaR が悲観的すぎ。
学術的には 500+ 日(約 2 年)を推奨。当サイトは現在シャープなど他指標との一貫性で 252 日、将来切替可能なウィンドウ提供の可能性。
⚠️ VaR / CVaR は日次頻度
表示される VaR は「単日 95%」、年次・月次ではない。換算:
- 週 VaR ≈ 日 VaR × √5
- 月 VaR ≈ 日 VaR × √21
ただしこれは正規シナリオでのみ成立。真の裾リスクは時間とともにより速く拡散。
⚠️ CVaR の小サンプル不安定
CVaR は裾の平均。裾が 12〜13 点のみ(252 × 5%)の場合、単一ブラックスワン日が CVaR に大きく影響。サンプル少 = CVaR が振動。
⚠️ 買うか買わないかのシグナルではない
VaR / CVaR が測るのは「リスク程度」、「買う価値があるか」ではない。
- 高 VaR + 高期待リターン → 価値あり(シャープレシオで判断)
- 低 VaR + 低期待リターン → 保守型投資家向け
- 高 VaR + 低期待リターン → 絶対避ける
裾リスクは収益面と組み合わせて見るべき、単独では誤判定。
延伸閱讀
- 〈ベータとボラティリティ:1 枚のチャートで銘柄リスクを把握〉
- 〈Sharpe Ratio とは?投資効率の測定〉
- 〈Sortino、Ulcer、Calmar — 下方リスク指標〉(Phase 1C.2〜3 近日公開)
- 〈Q-Q プロットと Jarque-Bera 検定〉(Phase 1C.4 近日公開)
試してみる
- 銘柄分析 → リスク を開き、Beta/Corr/R²/Std の下に VaR / CVaR カード
- ポートフォリオ を開き、Rolling Sharpe 下にポートフォリオ VaR / CVaR 新規追加
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